皆さんは「人と人間の違いは何?」と聞かれて、答えられますか?
辞書によっては、人と人間は同じ意味として、記載されていることもあります。
しかし、「言葉として別々にあるのであれば、何か違いがあるはず!」と思い、調べてみることにしました。
今回は、人と人間の違いについて、私なりの考察をご紹介したいと思います。
人の由来と言葉の意味は?
言葉の由来
人の語源は霊を起源として成り立ったという説が多く見受けられました。
その内の1つとして、クボテラ株式会社ホームページの内容を引用させて頂きます。
ヒトはどうでしょうか?「霊止」と書くというのです。「レイシ」と読むのではなく、「霊が止まるところ」。それがヒトよいうのである。何度もいいますが、火とは陽性。生命の顕現を象徴するものです。それを同じ読み方であるヒ、つまり霊と読むことができます。人が何故ヒト、霊止なのか?霊がとどまっていないならば、人間は単なる肉体、数十兆の細胞の集合体であったとしても、それは生命体ではない、死体という肉体であって人間ではないのです。
つまり、人(ひと)は、肉体ではなく、霊が本体であり、霊を肉体に止めておくと書いて、霊止(ひと)とすることが由来という説です。
幽霊が出る映画を観ていても、理性を無くして暴れまわるような幽霊は悪霊と捉えますが、多少透けていたり、首が無かったとしても、理性がある幽霊は、人として捉えることはできますよね?
恐らく、「霊止」という、人は肉体ではなく、霊が本体であるという考えを、私達が受け入れられるからこその描写ではないでしょうか。
意味
Goo辞書(デジタル大辞泉)では、以下の通り掲載されていました。
1 動物分類学上は、霊長目ヒト科ヒト属の哺乳類。直立二足歩行し、手で道具を使い、大脳はきわめて発達し、複雑な言語をもつ。多様な文化を伝承し、地球上で最も栄えた文明をつくり上げている。現生種は一種だけ。学名はホモ‐サピエンス。人間。人類。
2 個々の人間。ある特定の個人。「裕福な―」「大阪の―」「目上の―」「―は一代、名は末代」
3
㋐その事をするのにふさわしい人材。有能な人材。「彼は教育界では得がたい―です」
㋑ある仕事・職業などに従事する人材。「―を募集する」「―が不足している」
4 成人に達した者。おとな。
5 人柄。性質。「―が悪い」
6 世間の人間。「―の目を気にする」「―に何といわれようと平気だ」
7 自分と相手以外の人間。他人。「―の悪口をいう」「三時に―が来る」「迎えに―を遣る」
8 話し手が自分を第三者のようにいう語。わたし。「―のことも少しは考えてくれよ」
9
㋐妻が他者に対して、夫をいう語。「うちの―」
㋑意中の相手。恋人。
10 法律上、権利・義務の帰属主体である地位または資格。権利能力者。自然人と法人とがあり、狭義には自然人だけをさす。
11 人民。臣下。臣民。
「君も―も身を合はせたりといふなるべし」〈古今・仮名序〉
12 身分。
「―もいやしからぬ筋に」〈源・夕顔〉
13 人里。人気 (ひとげ) 。
「―に遠くて生 (お) ひ出でさせ給ふめれば」〈源・総角〉
14 従者。家来。供。
「某も―を持ってござれども」〈虎明狂・二人大名〉
[代]二人称の人代名詞。あなた。
「誠に、―は十三、我は十五より見そめ奉り」〈平家・七〉出典:goo辞書 出典:デジタル大辞泉
こうしてみると、様々な意味を持っていますよね?
比較するには意味が多過ぎるように思いましたので、以下の通り大まかにまとめてみました。
- 動物分類学としての意味
- あるグループや属性(裕福等)を持つ者
- 特定の性格や技能を持つ者
- 世間等、社会に属している人
- 法律や権利が適用される対象者
いかがでしょうか。これを元に、人間との違いを比較をしたいと思います。
人間の言葉の由来と意味は?
言葉の由来
言葉の由来としては、オールガイドにて、以下の通り記載がありました。
人間は、仏教語でサンスクリット語「mamusya」の漢訳。
仏教語としての「人間」は、「世の中」「世間」「人の世」を意味した言葉で、「人間」に「人」そのもの意味が加わったのは江戸時代以降である。
つまり、世の中や世間など、人々が暮らす社会的な意味合いが由来だったそうです。
これには驚く方も多いのではないでしょうか?
実は私も、人という意味しか含まれていないと思っていたため、大変驚きました。
意味
Goo辞書(デジタル大辞泉)では、以下の通り掲載されていました。
1 ひと。人類。「―の歴史」
2 ある特定の個人。ひと。「私という―」「東北の―」「社の―」
3 人柄。また、人格。人物。「―がいい」「―ができている」
4 人の住む世界。人間界。世の中。じんかん。
「―五十年下天のうちをくらぶれば」〈幸若・敦盛〉
出典:goo辞書 出典:デジタル大辞泉
私達が普段使用している人としての意味と、言葉の由来通りの世の中や社会的な意味も含まれているようです。
結局どう違うの?
人と人間の違いについて、人は、動物分類学的な意味も含めた人全般の広い意味を持ち、人間は、人柄や性格等の属性(裕福など)を持つ人という意味に加え、世の中や世間等を指す意味を持つ、という違いがあると言えます。
これは、人間の言葉の由来を調べた際に記載のあった、「人そのものの意味が加わったのは、江戸時代以降」という説から考えました。
これには、恐らく、江戸時代に幕府が奨励した、朱子学が影響しているのではないかと考えました。
朱子学は道徳を基本とした社会的秩序を重んじる学問とされています。
江戸幕府は恐らく、道徳によって、社会秩序を保とうとする教えを浸透させるために、社会秩序を保って、人の間(世間)に生きる人々を、人間と定義するようになったのではないでしょうか?
よって、人間の人としての意味には、動物分類学的な意味は含まれておらず、特定の人柄や属性(裕福など)を指す意味が含まれるようになったのではないでしょうか。
まとめ
- 人の由来は霊的な起源からで、意味には、動物分類学的な意味も含めた人全般を含む。
- 人間の由来は仏教語としての「人の世」「世の中」等からで、意味には、世の中や世間という意味に加えて、人柄や性格等の属性を指す意味も含む。
- 人間に含まれる人としての意味は、江戸時代以降から含まれるようになった。これは江戸時代に幕府より推奨された朱子学の影響と考えられる。
- 人としての意味で考える場合、人も人間も殆ど同じだが、世の中や世間を指す意味は、人間しか含まれていない。
いかがでしたでしょうか。
実は、多くの文章に記述されている人間という単語の部分は、人という単語に置き換えることが可能です。
そのため、意味としては、それほど違いが無いため、意味の違いに深くこだわる必要は無いのかもしれません。
しかし、小説や映画等の物語には、細かい言葉の違いを利用して、意図的に使い分ける場合もあります。
今後、小説や映画等の物語を鑑賞する際には、人と人間の意味の違いに注目してみてはいかがでしょうか。作者の意図をより深く理解でき、物語を楽しむことができるかもしれません。